2018.08.09
無呼吸症候群(SAS)は放置するとハイリスク
無呼吸症候群
港北ハートクリニック
長橋 達郎
無呼吸症候群とは
これまで、当健診センターの生活習慣改善指導4つの指針(食事、運動、睡眠、瞑想習慣)のうち、運動・食事・睡眠については、すでに本コラムで解説してまいりました。
前回のコラム記事は「薬に頼らない予防医療」を推進する当院おすすめの生活習慣4本柱である「睡眠」についてでした。健康体を維持するためには質と量が整った睡眠が必要であるという内容について書きました。再度、これまでの関連記事を下記にリンクしておきますので、まだお読みになってない方は、こちらの記事も御覧ください。
関連記事はこちら「運動」: http://kenshin.kohoku-heart.com/news/20180614-584/
関連記事はこちら「食事」: http://kenshin.kohoku-heart.com/news/20180705-594/
関連記事はこちら「睡眠」: http://kenshin.kohoku-heart.com/news/20180710-599/
さて、今回は前回の記事「睡眠」に関係する内容にはなりますが、その睡眠習慣が上手く行っていない方の「睡眠障害」について詳しく説明していきます。
睡眠障害を説明していく中で、必ず触れておけなければならないのが「無呼吸症候群」についてです。
無呼吸症候群とは、英語で表記すると Sleep Apnea Syndromeと書きます。よって、これらの頭文字をとって、SASと呼ばれています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、文字通り睡眠中に呼吸が止まる症状を指します。睡眠中呼吸が止まるということは、正常な睡眠状態に無いという事であり、身体は熟眠できていない状態になります。それらによって日常生活に様々な障害を引き起こします。これを総称して無呼吸症候群と呼びます。
さらに、無呼吸症候群には、それぞれ重症度が異なります。ここからは、無呼吸症候群の重症度を表す睡眠時無呼吸症候群(SAS)の定義と重要度分類について説明していきます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の定義と重要度分類
まず最初に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の定義について説明します。
一晩の睡眠(約7時間)の間に、30回以上の無呼吸があり、そのいくつかはノンレム睡眠期にも出現しているものを無呼吸症候群と定義します。
この場合の無呼吸とは、10秒以上の呼吸の停止です。これが30回以上あることを指します。
また、1時間あたりで見た場合には、無呼吸回数が5回以上出現している状態も、睡眠時無呼吸症候群(SAS)とされます。
ここからは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度について説明します。睡眠時無呼吸症候群(SAS)の重症度は、AHI(Apnea Hypopnea Index)=無呼吸低呼吸指数で表します。AHI(Apnea Hypopnea Index)とは無呼吸低呼吸指数と呼び、一晩の睡眠を通して、1時間あたりの無呼吸や、低呼吸(呼吸が浅くなる状態)の頻度をもとに診断していきます。
つまり、このAHI(無呼吸低呼吸指数)が5回以上認められ、日中の眠気などの自覚症状がある場合SASと診断されます。
次に重症度について説明します。
AHI(無呼吸低呼吸指数)が5回~15回は軽症。
AHI(無呼吸低呼吸指数)が15~30回が中等症。
AHI(無呼吸低呼吸指数)が30回以上が重症とされています。
無呼吸症候群は、いびきに注意
ただし、無呼吸症候群は本人には自覚がありません。そのため、一緒に眠るパートナーやご家族の方々に注意して見ていただく事も非常に重要になります。
例えば、夜中、よくいびきをかくとか、夜中にしょっちゅう目を覚ます等の症状が見られる方は、特に、睡眠の質や量が、共に下がっていると考えられます。更には、前述したような状態にある場合には、睡眠時無呼吸症候群の危険性がありますので、一度、専門医療機関でチェックしてもらう必要があります。
それでは、睡眠時無呼吸症候群(SAS)の具体的な症状を下記にご説明いたします。心当たりのある方は、すぐに医療機関の受診をおすすめいたします。
(1)いびきをかく
いびきは、睡眠中に空気の通り道(気道)が狭くなり、そこを空気が通るときにのど(咽頭)が振動することによって生じる音です。つまりいびきをかくということは、気道が狭くなっている事を示します。気道が狭くなる原因は様々ありますが、無呼吸症候群の症状の一つでもあります。
(2)寝汗をかく、寝相が悪い、何度もトイレに起きる
無呼吸の間はいびきが止まり、その後あえぐような激しい呼吸や大きないびきで呼吸が再開するのが特徴です。あえぐような呼吸をすることによって、寝相が悪かったり寝汗をかいたりもします。また夜中に何度もトイレに起きたりします。
(3)倦怠感や頭が重い
無呼吸症候群により呼吸が止まっている間は、酸欠を起こしている状態です。そのため、朝起きたとき、頭が重いと感じる事もあります。また、全身の倦怠感や不眠になったりもします。
(4)日中の眠気
無呼吸から呼吸を再開させる度に脳が覚醒状態になるため睡眠が分断し、深い睡眠が得られなかったり、夢を良く見るといわれるレム睡眠がこまぎれになったりします。そのため、慢性的な睡眠不足に陥り、日中眠気を感じてしまいます。
症状を感じたら、早めに専門医療機関を受診
特に、睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、疫学的視点からみると、日本人男性に多く、ある調査では、日本人の潜在患者数は約300万人と言われています。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)の症状については前述した通りです。「睡眠がちょっとおかしい」と感じたら、すぐに専門医療機関を受診し、検査をして貰う必要があります。主な検査の流れは下記になります。
上記の図で見るように、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断された場合には、鼻マスクによる陽圧呼吸療法(CPAP治療)等を行います。しかしながら、睡眠時無呼吸症候群(SAS)と診断されながらも、陽圧呼吸療法(CPAP治療)を受けている患者数は約40万人にとどまっています。
⇒CPAP療法は、CPAP装置からホースやマスクを介して、処方された空気を気道へ送り、常に圧力をかけて空気の通り道が塞がれないようにします。
その理由としては、睡眠時無呼吸症候群(SAS)という病態が、あまり理解されていない事や、これを放置することによるデメリットが認知されていないという理由からだと考えています。
しかし、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を放置するということは、夜間就寝中数時間の間は低酸素状態になっている状態を放置しておくということなので、健康寿命はもちろん短縮します。
また、高血圧や糖尿病の原因にもなります。通常の方と比べて脳卒中は4倍心筋梗塞は2〜3倍のリスクがあります。
特に、自動車の運転を仕事にしている方は、重篤な事故を起こすリスクも高まりますので、非常に危険です。
よって、たかが「睡眠」と軽視することことなく、睡眠状態に不安がある方は、当院内科にて睡眠時無呼吸症候群を調べる簡易検査をお受けください。周囲の方からの睡眠中の無呼吸の指摘や自覚症状がある場合には保険診療でご提供可能です。診断後の治療も、御本人のご希望などにあわせて治療することも可能ですので安心して受診してください。
また、睡眠時無呼吸が業務上問題になる方々(運転手など)向けには、法定健診プラス睡眠時無呼吸簡易検査をセットしたドライバーズセットという健診セットも用意しています。是非お問い合わせいただきご利用ください。